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第8世代に突入したTARMAC。歴代のバイクとその功績を紐解く。

  • スタッフブログ
  • 2023.08.26

去る8月7日、待望の新型ロードバイク「TARMAC SL8」が発表されました。
今作はターマック史上かつ、世界最速のレースバイクとして生まれ変わり、レースシーンでの活躍が期待されています。

そんなSL8の誕生に至るまで、7つのモデルと20年にも及ぶ研究開発期間を経ていることは、ご存知でしょうか?
今回はターマックを、より深く知っていただくために、歴代モデルの軌跡を振り返ります。

歴代のターマックとその功績を讃えて…

全てを征す1台は、如何にして誕生したのでしょうか。
起源は2003年に遡ります。

S-WORKS E5 AEROTECH(2003)

ターマックの先駆けとなったE5。幻のターマックとでも呼ぶべきでしょうか。
当時主流であった、アルミフレーム×カーボンフォークのハイブリッドモデルです。
シートチューブを薄くしエアロ効果を狙っています。
まだエアロ形状が一般的でない時代に、スペシャライズドは先見の明を持っていました。

このバイクは、イタリアの伊達男マリオ・チポリーニが駆けたモデルとしてあまりにも有名。
言うまでもなく、彼はS-WORKS E5で2002年の世界選手権を制しています。

S-WORKS TARMAC SL1(2006)

全てをゼロベースから見直し、設計された初代ターマック。
同社を代表するフレーム素材である FACT カーボンファイバー(当時のグレードは8r)を使用した、初のフルカーボンフレームとなりました。

2007 年の世界選手権では、パオロ・ベッティーニがSL1に跨り見事制覇。
この勝利以降、ターマックの地位は確固たるものとなります。

また同年には、現在もサプライヤーであるクイックステップ チームと契約し、機材を供給をスタート。
スペシャライズドを語るうえで外せない、歴史的な年となっています。

S-WORKS TARMAC SL2(2008)

SL2 は、ライドクオリティとレースパフォーマンスの両立を実現したモデルであり、この思想は現代まで受け継がれることになります。
大きく変化したのは、サイズごとの剛性調整を可能にした点です。
かつてのロードフレームは、サイズが小さくなると過剛性気味で、乗り心地を犠牲にしていました。

SL2では、05年の世界チャンピオンであるトム・ボーネンと共に、リアステーの再設計に注力。
フレームサイズごとに異なる剛性目標を設定することで、すべてのライダーに同じ乗り心地を提供するという革命的なバイクが誕生したのです。

S-WORKS TARMAC SL3(2010)

SL3 はルックスこそ先代に酷似していますが、剛性UPと軽量化が図られました。
こちらも現代では当たり前となった、複数の異なるモノコックユニットでフレームを設計しました。

ヘッドチューブ・ダウンチューブ・シートステー・BB一体チェーンステイ等々(FACT IS)
各部に適切となるカーボンレイヤーを施すことで、重量は軽く・剛性は高く。
まさに理想的なマシンであり、当時の最高傑作と言われました。

またデビュー戦となったツールドフランス2010において、アルベルト・コンタドールを優勝に導き、名実ともに最速マシンとなったのです。

S-WORKS TARMAC SL4(2011)

SL3 発表からわずか 1年後の刷新は大変異例であり、当時のマーケットに衝撃を与えました。
フレーム は先代よりも約 50g 軽く、重量剛性比は 19% 向上。
スペシャライズドの高い技術力を誇示する代表的な出来事の1つです。

SL4の主な特徴は、「テーパードヘッドチューブ」の採用。
技術面の詳細は割愛しますが、発表後に他メーカーも追従する形で同形状を積極的に取り入れました。
またケーブルもフル内装となり、現代ロードバイクの基礎といえる原型です。

2012年のロンドンオリンピック 男子ロードレースでは、アレクサンドル・ヴィノクロフが金メダルを獲得。

ちなみに2011年は、初代VENGEが発表された年でもあります。
同年の世界選手権は、マーク・カベンディッシュがVENGEで勝利を収めています。

S-WORKS TARMAC (2014)

SL4 の後継モデルとして投入されたましたが、一体型シートクランプ・よりエアロなダウン チューブ・ストレートトップ チューブを採用し、SL4をブラッシュアップ。

またターマック初となるディスクブレーキモデルも発表されました。
当時はエンド規格の乱立などから、懐疑的な意見が多く残念ながら受け入れらませんでした。
しかしながら、ディスクブレーキフレームの重量増加は、わずか80gと最小限に抑え、新しいフレーム設計によりハンドリングと俊敏性が大きく向上。ここで培った技術は、後の開発に大きく活きることになるのです。

リムブレーキモデルでは、14年ツールドフランスをヴィンチェンツォ・ニバリが総合優勝。
15年世界選手権はペーター・サガンが制覇し、輝かしい功績を残しました。

S-WORKS TARMAC SL6(2018)

SL6では更なる軽量化を図りつつ、シリーズ初となるエアロダイナミクスが設計に取り入れられ、大幅な変更が加えられました。

大きな特徴は、ドロップドシートステイとD字型プロファイルのエアロシートポストです。
これまで空力を優先することは、重量を犠牲にすることとされていました。
しかしSL6 は、初代Venge と同等のエアロ性能を持ちながら、当時のどのエアロバイクよりもはるかに軽量という驚愕のスペックを有していました。

また前年に、UCIがディスクブレーキの使用を解禁したため、ディスクモデルも本格投入されることに。
余談ですが、ディスクブレーキモデルによる、プロレース初勝利は同社のVENGE VIAS DISC。
まるで神の思し召しのように、歴史的瞬間は常にスペシャライズドと共にあります。

S-WORKS TARMAC SL7(2020)

3年前に「全てを叶える一台」として、フルモデルチェンジを果たしたSL7。
ターマックの軽量性はそのままに、エアロ設計を強化し、グランツールを一台で走りきるという唯一無二のオールラウンドバイクが誕生したのです。

そしてスペシャライズドが思い描いた通り、2020年から22年までのロード世界選手権タイトルをすべて獲得する快挙を達成。グランツールでは区間優勝を量産し、ワンデイクラシックでもその強さを見せました。
レースタイプやコースレイアウト、ライダーの脚質を問わず勝利を収めることができたバイクは、SL7だけです。

20年/21年世界選手権男子:ジュリアン・アラフィリップ
22年世界選手権男子:レムコ・イヴェネプール
20年世界選手権女子:アンナ・ブレッフェン
22年ブエルタ・ア・エスパーニャ:レムコ・イヴェネプール
23年UAEツアー:レムコ・イヴェネプール

SL7はスペシャライズド史上、最も成功したバイクとなりました。


いかがだったでしょうか?
今作にいたるまで、多くの功績とドラマを生み出したターマックシリーズ。
第八世代となったSL8が、この歴史を繋げ、新しい物語が生まれる事でしょう。
今後の活躍に目が離せません!!

この記事を書いたスタッフ

藤木 大貴

藤木 大貴(DAIKI FUJIKI) スポーツ自転車歴15年。高校時代、クリテリウムのロードレースで活動。大学ではトライアスロンに挑戦。 デュアスロンでは、世界選手権出場経験を持つ。